[009]
参考人(警視総監) 田中榮一
年々増して行くと申しますのは、先ほど私が説明いたしましたごとくに、20才未満の者は数の点につきましては比較的少いのでありますが、20才以上の者はやはり相当多いのでありまして、これはある意味におきましては、文士であるとかあるいは技術者であるとか、非常に興奮状態において制作するというようなよい意味における興奮剤使用の面もあるのでありますが、やはり興奮剤使用により性行為の満足を得たいというようなもの、それから不良仲間においてそういうものを使用しておりますので、先ほど申述べましたごとくに、注射の跡等が多いだけ不良仲間において重きを置かれるというようなことで、そうしたみえから来るものもあります。
それからまたこれを利用する側以外の、提供する側でございますが、これにつきましては最初日本人の仲間でも相当に売っておったのでありますが、最近におきましては朝鮮人なんかが相当これを販売して流しております。私どもの方におきましても、朝鮮人部落を何回も急襲いたしまして、相当な量をあげておるのでありますが、やはり販売する者があることによってつい使ってしまう、やってみるとなかなかいい、また一方においてはみえからもこれを使うというようなことから、需要者側がふえると同時に、それに基いてどうしてもヒロポンを売る者が出て来るわけであります。
現在市場にと申しますか、やみに出て流れておりますのは、正規のものでは全然ないのでございまして、いずれも朝鮮人の部落等におきまして、きわめて簡単な方法によってつくられておるものでございます。
つくる方法としましては、御承知のように白金または銀を触媒としてエフェドリンから製造する製造方法としてはこれが一番簡単でございますので、これによって原末をつくって、蒸溜水または水に、一定の割合で混じて、自家製のアンプルに溶閉して、これをレッテルも張らずに流してしまう。
もう一つのは、フェニル酢酸、塩化ベンゼル、青化ソーダなどの混合薬品を原料として、これらの化学的操作によって製造するものでございます。ただこの方法は相当技術的な知識を要するのでありまして、原末密造につきましては前者の方法をとる方が簡単でありますので、当庁で検挙した原末密造6件のうち前者の方法によるものが4件、後者の方法によるものが2件ということになっております。
朝鮮人等におきましては、原末を大阪方面から大体100グラム包み8000円程度でひそかに持って参りまして、そして自宅でもって水道の水または蒸溜水で割りまして、アンプルに溶閉してこれをひそかに売り出す。これが現在都内にも相当流れておるのじゃないか、かように考えております。従ってわれわれとしましては、使う方があると同時にまたつくる方があるのでありますから、このつくる方を抜本塞源的に取締らなければならぬというので、朝鮮人部落等を何回も急襲いたしまして、その都度多量の薬品または原末あるいは水溶液等を押収いたしておるような状況であります。
[010]
日本社会党(社会民主党) 柳田秀一
私の考え方は警視総監の考え方と大体同様でありまして、つくる側を押えなければならぬ。
さらに今までのヒロポンは、正常なルートに流れておるものは一つもありません。みなやみのルートばかりでありますから、従って使用した者に対する厳罰ということは同感でありますが、今申しました年々累加しておる原因は何かということであります。この点はしろうと考えかもしれませんので、ひとつお聞きかせ願いたいと思いますが、私が考えるのに、むしろやみで生産される量が年々ふえておるのではなかろうか。やみでふえるとなると、どうしてもそれをブローカーを通じてはかさなければ金にならない。従って相当の手段を講じてやみの販路を広めておる。
たとえて言うならば、ヒロポンの犯罪でも、ヒロポンによる幻聴幻覚が起るとか、そういう意味の発作的な犯罪、あるいはヒロポン代ほしさの犯罪、こういうふうにありますが、ヒロポン注射の入手に困っておる、入手に困っておるのは金がないから困っておるので、困っておるような人間に対しましてはその虚につけいって、お前にはただで打ってやるから、これだけのものは責任をもってはかせ、こういうふうな方法もとられるであろう。またこれがどこかの報告を見ましたところによっても、大学あるいは高等学校の学生等も使っておるということになると、試験勉強のときに何日か徹夜をする、こういうときにヒロポンを打ってみろ、頭がよくなるぞ、試験の前にヒロポンを打っておけばきっと合格するというような甘言を弄して、ブローカーが次から次と人を伝ってねずみ算式にふえて行くのではないか。むしろ検挙者が累加している原因は、やみで製造されておる製造量がふえておるのが根本原因ではなかろうかと思うのでありますが、この点はどうでしょうか。
[011]
参考人(警視総監) 田中榮一
先ほど私が御説明した中に警視庁におきまする覚醒剤取締りの結果の数字を申し上げましたが、これはいずれもやみで製造され、やみで販売されておったものを全部押収されたのでありまして、大体一昨年よりは昨年の方が原末におきまして7倍、それから水溶液におきまして8倍の押収物件をあげております。
それはもちろん取締りを何回もいたしました関係で多くなったものもございますが、やはりお説のように密造並びに密売が相当多くなっておるのであります。特に関西方面から相当原末が流れて参りまして、それが都内に流れておるのではないかというように考えておりますので、なお今後もこの取締りだけは厳重にいたしまして、押収物件は全部押収してしまうという方法で取締って行きたいと考えております。
[012]
日本社会党(社会民主党) 柳田秀一
検挙者が年々累加する原因が、むしろ需要者にあるのではなしに製造者にあるという私の考えの一つのもとになるのは、統計を見ましても東京都に近接する神奈川県、静岡県、あるいは埼玉、群馬等に非常に多いのであります。
これはやはりそういう東京都内に近接するところは、ブローカーがいわゆる需要者の販路を開拓するのにも都合がいい、あるいは開拓するのにもそれが採算に合うというような点があるのではなかろうかと推察されるのであって、そういうところから検挙者がふえるのではなかろうかというふうにも考えるのでありますが、特に東京都に近接したところにこういう検挙者が多いという点をにらみ合せて、これに対してはどういうふうにお考えになりますか。
[013]
参考人(警視総監) 田中榮一
私最初に申し上げました覚醒剤の原末の原料でありますエフェドリンが相当利用されておるのであります。このエフェドリンの取引状況でありますが、密輸入のエフェドリンは純白の精製品でありまして、米国製の旗印というのが一番優秀品だそうでありますが、香港では1キロ17ドル前後で売買されており、内地ではブローカーが500グラムを6500円ないし9000円くらいで取引をしておるようであります。内地製のエフェドリンは、麻黄から製薬会社で抽出して製薬するものと化学合成品と2つあるそうでありますが、国内消費は年間約5トン余でありまして、抽出品の価格は1キロ2万3000円くらい、合成品は1万6000円くらいで、内地産は主としてぜんそく、せきの薬などの製造原料として製薬会社で販売され、また薬局では粉末または錠剤として5グラムまたは25グラム包みとして市販されております。
このように、価格はむしろ密輸入のエフェドリンの方が単価が安く、原末密造者は国内産では生産コストが高いので、密輸入品を原料にして盛んに使っておる。従ってやはりこのエフェドリンの密輸入ということも相当考えられますので、一方におきましてはこの密造を抑制する意味におきましてエフェドリン等の密輸入ということもよほど厳重に取締りをいたしませんと、結局エフェドリンそのものが覚醒剤原末の原料に相なりますので、こういう点も十分注意して行かなければならぬと考えております。
[014]
日本社会党(社会民主党) 柳田秀一
仰せのごとくこのやみのルートは輸入、密造、譲渡、使用、こういう段階にわかれるのだろうと思いますが、最初、戦後は今国内で法的に製造を許されておる2つの会社の製品のレッテルを張っておった。最近はそうではなしに、生じ出ておるということは信用度が高まって来たという一つの証左であるということも何か新聞に出ておったと思うのです。
そこで製品が相当高度に機械化され、そしてかなり製品の精製度も高くなって来ておるという現状で、先ほど警視総監のお話のように、朝鮮人部落においていろいろと小口の密造の場所もあるように聞いておりますし、先般来この青少年保護育成運動期間中に、後楽園あるいは深川等において手入れがあったように聞いておりますが、それ以外に何らか地下に少くとも一つの企業として成り立つくらいの大きなやみ工場でもあるのではなかろうかというような疑いすら持ってるのですが、そういう点はどうですか。
もしもなおそのほかに公開の席上で御答弁しにくいことがあるならば、委員長におとりはからい願って秘密会にしていただいてもけっこうでございますが、そういう点もあわせてお答え願いたいと思います。
[015]
参考人(警視総監) 田中榮一
大体密造の場合におきましてはきわめて小規模な工場でやっております。
私の方でやりました中で比較的大きなものとしましては、大宮市で検挙いたしましたものは、小さい古い工場を借り入れて研究室をつくりまして、やはりエフェドリンを銀または白金の触媒によって製造しておったのでありますが、これが約6万5000本程度つくって隠しておった。これは元陸軍の薬剤関係に従事しておった者で、復員してから非常に生活に困り、苦しくなってやったものであります。
それから北区田端町の大内某というのが、これは朝鮮人が金を出しまして浦和市の常盤町の廃工場を借り受けまして、やはり研究所をつくりまして、昨年の8月から相当な機械等を入れましてこれをつくっております。
大体におきまして大がかりになりますとすぐ警察の手が入れられますので、大体小さな自宅の8畳の部屋であるとか、あるいは2階でつくりまして、そうして転転として居所を転ずる。きょうはここでつくったけれどもあすはまたほかに行ってつくるというように、なるべく人目にかからぬようなところでつくる。従って大規模の製造というものは現在われわれの方で検挙したものの中にはございません。大体において家内工業的な8畳の部屋でやるとか、2階のすみの部屋でやるとか、そういう小さなものでございます。ことにああいうものは小さいアンプルで、かりに1万本にいたしましても小さなものでございますので、製造の実体はさようなものでございます。
[016]
日本社会党(社会民主党) 柳田秀一
ちょっと国警の方にお尋ねいたしますが、今全国で密造業者はどれくらいありますか。それからとにかく悪を伝播いたしますのはブローカーだと思いますが、このブローカーは大体どれくらいありますか。むずかしい統計ではありましょうが、今までお調べになったどれくらいの数と踏んでおられますか。
[017]
日本社会党(社会民主党) 長谷川保
ちょっと関連して。ついでに全国の中毒者の見込み数。
[018]
政府委員(国家地方警察本部警視長(刑事部長)) 中川董治
政府委員 この密造者とか、ブローカーの数はつかみにくいものですからしっかりした統計を申し上げにくいのですが、私ども刑事的に申しますと、覚醒剤違反の罪の中で、製造の行為で犯罪になった数はわかるのでございますが、その他ブローカーとか、そういった連中がいることも実際でございまして、そういう点の内偵には非常に苦心をしておるのですが、明確につかんだものはちょっと申し上げかねるので御了承を願いたいと思います。
[019]
委員長代理 松永佛骨
今長谷川委員からのお尋ねがございましたが、中毒者の数は全国でどのくらいあるか、ついでに御答弁願いたい。
[020]
政府委員(厚生事務官(薬務局長)) 高田正巳
中毒者の数でございますが、これも実はとても見当がつかない。あるいは何10万と言われ、あるいは100万とも言われているのですが、私ども昨年予算の問題なんかを考えました際に、いろいろの資料から一応の類推をいたしまして、大体この見当だろうという数字を実は立ててみたんです。これは実にあやふやなものでございましてさっぱり確信がございません。そのときに私どもが推定をいたしましたのは20数万という数字を出したのでございます。しかしこれはまったく確信のない数字でございます。御了承を願います。
[021]
日本社会党(社会民主党) 柳田秀一
警視総監にお伺いいたしますが、大体警視庁で押収されてそこで調べられたところによりますと、1アンプルにつき原価は大体どれくらいかかっておりますか、さらにそれをどれくらいの値段で売っておりますか。
[022]
参考人(警視総監) 田中榮一
大体密造いたしまする元でですが、元では1アンプル3円50銭ないし4円で卸しまして、そうしてその間数人のブローカーが入りまして、結局実際の常用者の手に渡しまするときには現在相場が15円から20円でございます。
[028]
日本社会党(社会民主党) 滝井義高
関連して。今警視総監のいろいろな御説明で大体大要はのみ込めたのでございますが、第三国人が非常に覚醒剤の製造に関与をしておるというお話もあったのです。
これは国警の刑事部長さんにもお尋ねしなければなりませんが、麻薬の密輸入には大体100億の金が動くということは、この前薬務局長からもそういう推定的御説明もあったわけですが、ヒロポンで大体どの程度の金が動いておられると御推定になりますか。これは全国的なごくあらましの推定でけっこうでありますが伺いたい。
[029]
参考人(警視総監) 田中榮一
国籍を参考に申し上げますと、昨年警視庁で検挙いたしました数で覚醒剤の密造者の国籍は、日本人が27.3%、朝鮮人が71.9%、中国人が0.8%で、断然朝鮮人関係の密造者が多いのでございます。
それから覚醒剤違反者、これは覚醒剤を打っておる者でありますが、今ちょっと数字がございません。
それからどの程度の金が動いておるかということでございますが、これは今のところ私の方にも統計がございませんので、お答えすることができないのでございます。
[030]
政府委員(国家地方警察本部警視長(刑事部長)) 中川董治
この犯罪として警察が見つけたものの注射薬の量はわかるのです。そこから推定するのはちょっと無理な話ですが、その量だけ申し上げておきます。昭和28年に犯罪の対象になりました注射薬は7444万3660CC、錠薬が20個、厚末が49万6471グラム、今申し上げました数量は私ども警察が犯罪の対象として見つけた物品の量でございます。これを値段に換算して考えるということが一応の推定かと思いますけれども、ちょっとこれは危険かと思いますので、それだけ申し上げて御了解いただきたいと思います。
[031]
日本社会党(社会民主党) 滝井義高
この覚醒剤の経験をした青少年が非常に多いということですが、実は新聞その他の推定によればその経験のある者が150万といわれておりますし、さいぜんの薬務局長の御説明でも、中毒患者とみなされる者が20数万、各新聞なんかを見ると70万といわれておるわけです。今の動いた薬品の量等から推定してアンプル1CCで10円としても、優に7億以上の金が動くということになるわけです。
終戦後ヘロインとかモヒというようなものは非常に微量で高価なものであった。従ってこれらのものが政治資金として動く情勢というものは相当あったと推定されるのです。これは公安調査庁の意見を聞かなければなりませんが、おいでになっていないようです。従って現在中国人あるいは朝鮮人等が70%以上関係しておるということになれば、こういうものが何か政治資金として動いておる様子があるかどうかということです。もしそういうものとのつながりがあるということになれば、これは非常な根強さをもってやはり日本の国内にはびこって行く可能性は十分にあると私は思う。
そういう情勢は全然ないものなのか、こういう点は当然あなた方においても調査されておると思うのです。というのは、麻薬との関係が終戦後相当あったと私たちは見ておりますので、その点きわめて重要な点だと思いますから、ひとつ御説明願いたいと思います。
[032]
参考人(警視総監) 田中榮一
先ほど私が説明いたしました北区田端町新薬研究者大内某、この事件を取調べておりました際に、ある朝鮮人が資金を出しまして、朝鮮人と合同出資でヒロポンを密造しておったのでありまするが、その朝鮮人がさらにまた某市のある朝鮮人から数10万円の融資を受けまして、そうして製造をいたしておったのであります。
この朝鮮人がその某市の祖防隊のキャップをしておった関係がございまして、そういう点からあるいは共産党の、共産党でなくとも、何かそうした政治資金にこれが利用されているのではないかというので、一応捜査をいたしておるのでございますが、その辺は十分明確でございません。結局単なる金を貸したんだということに一応なっておるのでありますが、この辺のところがまだはっきりいたしておりません。