昭和24年03月31日 参議院 地方行政委員会

[001]
委員長 岡本愛祐
これより委員会を開会いたします。今日の議題は、派遣議員の報告でございます。選挙関係は報告が済みましたが、まだ兵庫、山口、島根各県に治安状況の現地視察に参りました、その報告が残っておりますから、今日はそれを御報告いたします。

私と黒川議員と島村議員3人が今申しました3県下並びに門司の海上保安本部に治安関係の調査に行くことになりました。島村議員は止むを得ない事情で遂に行を共にすることができなくなられまして欠席されました。

(中略)

先ず調査各地における朝鮮人問題の概観を申上げますと、阪神地方においては、従来から労働問題、思想問題に関連しまして、同地に在留しております朝鮮人がその影響を非常に受けておるのであります。戦後朝鮮人の多くは生業を離れまして、失業状態に陥っておる人が非常に多いのであります。闇ブローカーとか、酒類の密造等の経済違反行為の温床をなしておるのであります。

大阪、兵庫附近におきます朝鮮人の数は非常に多い。そこにこの経済事犯行為が非常にありますし、又いわゆる闇商人が列車を乗り廻っておるというような状況であります。殊に最近はこの種の違反行為が集団的、計画的且つ悪質なものとなる傾向が強くありまして、従ってその取締の対策もこれに相応して強力且つ充実せるものが必要となって参りました。

今年の2月の9日に、尼崎市の自治体警察が中心となりまして、検察庁、国家地方警察、税務当局等がこれに協力して、一体となって尼崎市の守部部落における朝鮮人の集団的な酒類の密造に対する一斉の取締を行いまして114名を検挙し、酒類133石、その他証拠品を多数押収しましたが、これは従来こういう取締をしようとしますと、どういうわけですか事前に漏れまして、うまく行かなかったのであります。いろいろ神戸の検察庁、警察の方で苦慮いたしまして、これは当日いよいよ検挙に着手いたします直前まで税務署、それから警察署の方に知らせなかったのであります。幹部だけは知っておりました。これを甲子園ですかの野球場において新刑事訴訟法の講習会を開くという名義で招集しまして、そうして皆集まって来たところで、実はこれから尼崎市のこういうところに検挙に行くんだということで行ったんです。それで非常にうまく行きまして、この新刑事訴訟法下に立派な検挙ができて、大した事故もなかったのであります。こういう例がございます。

(中略)

島根県下の朝鮮人は在留期間の長い者が比較的多いのでございます。全般的にいつて比較的温順である。併し益田町の高津部落の朝鮮人約11戸、70名おりましたが、それが集団居住しておりまして、定まった生業を有する者が少く、密造酒、闇物資の仲介等によって大体生活を立てておるという状態であります。これは他の地方におけると殆んど同じ型に属しておりまして、ただそのスケールが小さいのであります。

この地方における朝鮮人の間には朝連を通じまして十分の連絡がありまして、必要に応じては、益田町事件の例に見られるように、附近の朝鮮人を直ぐ急速に糾合しまして、そうして警察署に押寄せて行く。そうして益田町事件の場合は200名を動員しまして警官隊との間の乱闘が起きまして、20余名の負傷者が生ずるに至ったのであります。穏健だといってもその附近から直ぐ応援に参りますから、なかなかこれも油断ができない情勢であります。以上は3県の一般の状況であります。

(中略)

戦後激動する社会情勢を反映しまして、生活の不安定からややもすれば動搖不穏な雰囲気を釀成し易い環境に置かれまして、この在留朝鮮人は精神的に、又物質的に絶えず刺戟と影響を与えられております。密造酒や、密造のたばこ、密貿易なんかを取締ることは我々の生活権を脅かすものだというような主張をしている者もあります。併しこういう情勢の悪化をどうしても助けているのは朝鮮本土からの密輸、密貿易、密航事件であります。その中継拠点になっておりますのが対馬であり、隠岐島である。この対馬、隠岐島の状況はこれは相当憂慮しなければならない。又警察方面、殊に海上保安庁方面においても取締を要するものと認めるのであります。殊に対馬方面では余程ひどい条件になっているようでございます。この点について後程公安委員長並びに海上保安庁方面でお分りになっている点について、改めて御説明を願いたいと思っております。

(中略)

下関市には1万5000人からの朝鮮人の部落があります。これはその中には殆んど自治体警察の警察官が入れない。入ればピストルで射たれるというような危険な状態でありまして、全く手を挙げているのであります。まあうんと警察官を増員いたしまして、取締って行けばとにかく、毎日そこを巡邏し、密行するようなことはとてもできない、こういう状態であります。

山口県知事が言われた話であったのでありますが、山口県の知事は、非常にこの山口県における朝鮮人問題、朝鮮人によって釀し出される治安問題ということを憂えております。今のような状況では、もう自信は持てないとまで申しております。