昭和37年08月28日 参議院 社会労働委員会

[021]
自由民主党 高野一夫
これは警察庁のほうか関税関係のほうか、あるいは厚生省からか、どちらからでもけっこうですが、密輸違反事件の説明を先ほど来伺っておりますと、やはり日本人が数が多いのですが、しかし、麻薬にしぼって考えてみると、やはり中国人、韓国人、そういう人が相当多いような感じがします。

そこで、私が一つ疑問に思うのは、ヒロポンのときの当時の法務省、あるいは警察庁関係の説明を伺いますと、密造部落があちこちあった。その密造部落の非常に規模の大きなものが北鮮系、特に朝鮮人がやっておる。そうしてその朝鮮人は、自分たち同じ民族には絶対に売らない、日本人だけに売る、こういうような非常に厳重なやり方をしておる。

私どもは、当時政府側と相談いたしまして、これは日本民族の将来に対する体質を破壊させる、あるいは精神混迷、また、社会秩序の混乱というようなことを企図した一つの思想活動の現われじゃないだろうかということも考えて審議を当委員会でしたことがあるのですが、この麻薬の密輸という、ことに、これは台湾か中国本土か知らぬけれども、相当中国人が多いというふうなことから考えて、こういうような思想的背景のもとに、ことさらにもうけ主義でなくやっておるというような傾向は見えませんか。完全なるいわゆるもうけ仕事と断ぜられますか。

[022]
政府委員(厚生省薬務局長) 牛丸義留
現在の日本の密輸者が中国系の第三国人が多いということは、ただいまの御質問のとおりでございまして、それがもうけ主義のほかに、思想的なものというところまで私どもはここで確証をつかんでおるわけではございませんが、たまたまことしの5月、ジュネーブで第17回の麻薬委員会が国連の主催で行なわれたわけでございますが、そのときに中国代表からそれに近いような発言がございましたことは、一つの事実としてございますので、御報告申し上げておきます。

[023]
説明員(警察庁保安局長) 野田章
先ほど提出しました「麻薬犯罪の実態とその取締概況」の8ページないし9ページに、外国人の麻薬犯罪に対する関与の状況が記載してございますが、ここにありますとおり、8ページの最後のところに、外国人の麻薬犯罪に対する関与の割合は、昭和33年17.9%、34年15%、35年が10.8%年々全体の割合は減っておりますが、密輸あるいは卸元等の関係につきましては、9ぺ-ジの表にありますとおり、「輸入」のところでは、日本人がなくて朝鮮が2.6、中国人が17.6ということで、輸入関係等では中国人及び朝鮮人が非常に多い。

それから、なお、密輸に従事しておる、あるいは密売等に従事している者の中の中毒者の数というのは、末端のものは比較的中毒者が多いわけでありますが、卸元とか、あるいは、密輸入者というものには比較的中毒者が少ない、これはやはり思想的動機があるかどうかはよくわかりませんが、やはりこれらの元凶というものは、自分自身が麻薬禍に侵されてはいない、他人を害するという、商売本位でやっておるということがうかがわれると思います。なお、暴力団等の麻薬犯罪の関係者等につきましても、一般の麻薬犯罪者の中における中毒者の割合よりも、暴力団の密売者の中における中毒者の割合が非常に少ないという数字が出ております。